不妊の辛さを乗り越えて・・・祈りの力・・・第一サムエル記1章1~28節
不妊の辛さを「祈り」によって克服したハンナという女性をご紹介いたします。:第一サムエル記1章1節~28節
マタイの福音書6章33節に「神の国とその義をまず第一に求めなさいそうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます」とあります。
ここに「求める」と言うのは、「祈る」ということです。 祈りのうちに、私たちが「神の国とその義」とを第一に求めて行く時に、そこには豊かな祝福が約束されているということがわかります。
そして聖書中に出てくる「神様から豊かに用いられた人物」は例外なく、祈りの人であったということがわかります。アブラハムもそうですし、ダビデもそうですし、エリヤも、ダニエルも、そして何よりもイエス様ご自身が本当によく祈る人であったことが聖書に記されています。
そしてここに取り上げる、もう一人の「祈りの人」としてハンナという女性に注目をしていきたいと思います。 このハンナという女性はどういう女性だったでしょうか?なぜ彼女は祈ったんでしょうか?そして祈りの結果彼女はどうなったでしょうか?そのようなことを注目していきたいと思います。
1.ハンナの悲しみ
ハンナとは、一言で言うならば悲しみの中に沈んでいる人だったと言えると思います。なぜ彼女は悲しんでいたんでしょうか?それは彼女に子供がいなかったということが出発点であります。2節をお読みしたいと思います。
「1章2節:エルカナニは二人の妻があった。ひとりの妻の名はハンナ、もうひとりの妻の名はペニンナと言った。ペニンナには子供があったが、ハンナには子供がなかった」。
さらに4節を読むと、「彼女(=ペニンナ)の全ての息子・娘達」というふうに出てまいりますので、子供は一人だけではなくてたくさんいた。息子も娘もいたということがわかります。
ところが正妻であるはずのハンナには、子供は一人も与えられなかった。 これがハンナの苦しみの始まりでありました。 結婚した女性が子供を産まないという状態は、当時としては女性としての役割も責任も果たせていないとみなされることでありました。また子供は神様からの祝福の印と信じられていましたので、子供が与えられていないという状態は、あたかも神様から祝福されていないかのように感じてしまう、そういう状態でありました。 実際に6節を見るとそこに「主がハンナの胎を閉じておられる」という言葉が出て参ります。この不妊の状態が神様から来ているということがここに示されています。 なぜ神様はハンナの胎を閉じておられるんでしょうか?なぜ神様はハンナに子供を与えてくださらないのでしょうか?
いずれにせよ、「不妊」という事実を突きつけられて苦しんでいるハンナの姿がここには示されております。
2.ペニンナの嫌がらせ
そんなハンナの苦しみを、さらに深くしたのがペニンナの存在でありました。エルカナの第二夫人だったペニンナは6節を見ると「彼女はハンナを憎んでいた」という風に書いてあります。ハンナを憎んでハンナに嫌がらせをしたということが、6節に書いてあります。
6節を読んでみます。「彼女を憎むペニンナは、主がハンナの胎を閉じておられるというので、ハンナが気を揉んでいるのに、彼女をひどく苛立たせるようにした」と書いてあります。 ハンナはペニンナから、憎しみをぶつけられる、そういう状態であったということであります。そしてハンナは気を揉んでいるんです。
それは分かった上で、ペニンナは、わざとひどくいらだたせるようなことをした。しかもそれを毎年毎年繰り返したとここに書いてあります。 自分にはたくさんの子供がいる、そうしてハンナには一人も子供がいないという、その立場の違いを利用して様々な嫌がらせをし、しかもそれを繰り返した。このペニンナの態度がハンナを苦しめていたということがわかります。
子供がいないというだけで苦しんでるんです。それだけでも、もう本当に悩んでるのに、その部分を何度も何度も攻撃されたら、もうそれは本当に耐えられない苦痛であるということは分かると思います。
3.夫、エルカナと2人の妻
このハンナに対して夫のエルカナはとても優しい夫であるように見えます。8節を見ると夫のエルカナはハンナを慰めている。
「ハンナなぜ泣くのか?どうして食べないのか?どうして塞いでいるのか?あなたにとって私は、10人の息子以上のものではないか」という風に、慰めの言葉をかけていて、とても優しい男性であるような印象を受けます。 でもよく考えてみると、そもそもこの事態はどこから来てるのか?夫のエルカナにも一つの原因があるというふうに考えられるんじゃないかなと思います。
なぜエルカナはハンナという妻がいたにも関わらず、ペニンナという女性と結婚したんでしょうか? それはおそらくハンナに子供が与えられなかったからということが考えられます。もしハンナに子供が与えられていれば、おそらくエルカナはでペニンナとは結婚することがなかったんじゃないでしょうか?
これは当時としては普通にあった習慣だったようですけれども、でもこのエルカナの取った行動が、結果的にはハンナをさらに苦しめることにつながっていたという風にも考えられるんです。どんなに慰めてもその言葉がハンナには届かないということが分かるんではないかと思います。
4. 二人の妻の葛藤
ペニンナには子供が次々とは与えられていく。自分には子供が与えられない。しかも、ベニンナはハンナを見下げるようになっていく。あからさまにハンナを苛立たせるようになってしまう。
ペニンナにしてみれば、子供のいないハンナのことを、エルカナが愛しているということがとても許せなかったんだろうと思います。
子供がいないのに夫の愛情を受けているハンナ。その一方に子供がたくさんいるのに夫の愛情を十分に受けることのできないペニンナ。
このようにハンナにはたくさんの苦しみを抱えていたということがわかります。
第一に子供がいないということに苦しんでいますし、それゆえに妻としての責任を果たせていないということに苦しんでいますし、さらにペニンナの嫌がらせに苦しんでいますし、何よりも神様が自らの胎を閉じていると言うこと、そこに苦しんでいる。
このようにハンナは何重にも渡って苦しめられていたということがわかる。そんなことの故に、涙を流し食事も喉を通らなかったとが、こにに記されています。 普通の人であるならば、もうここで絶望してもおかしくないようなそういう状況だったかもしれません。実際にこのような状況の中に置かれてしまって、自らの命を絶ってしまうという選択をする方も、もしかしたらおられるかもしれないそれくらいの厳しい悩みだったと思います