賛美と呪いが同じ口から

ヤコブの手紙３章5～１２節

【１】 舌が制御されなければならない理由
先週はヤコブ１：１～４の箇所から、「舌が制御されることの大切さ」について学びました。しかし私たちはもう少し、根本から考える必要があります。なぜ私たちの舌は制御される必要があるのでしょうか。それは、制御されなければならないものが私たちの舌にあるからです。そして、もし制御されなければ恐ろしいことが起きるからです。
舌を制御することは、ある意味で対処療法に過ぎません。確かに舌がうまく制御されていれば私たちの人間関係は円滑になることでしょう。そして私たちは充実した人生を歩むことができます。しかし聖書は私たちの内側のもっと深い部分を照らします。その部分での解決を提示します。
私たちは、私たちの信仰が人間関係を円滑に営むための技術、または充実した人生を歩むための対処法になってしまわないよう、注意しなければなりません。たとえ表面をうまく取り繕うことができたとしても、私たちの内側にある問題が放置されてしまうことがないように気をつけたいと思います。

【２】 舌は不義の世界
ヤコブは私たちの舌が制御されなければならない程、恐ろしいものであることをここで教えています。私たちの舌は三つの点で恐ろしいものです。
第一に、舌は火です。舌は小さな器官ですが、大きなことを言って自慢します。その力と影響力は小さな火が大きな森を燃やすくらい甚大です。「あのように」小さな火が、「あのように」大きな森を燃やしてしまう程、それは破壊的なのです。
第二に、舌は不義の世界です。「不義の世界」とは、「神が存在しない世界」という意味です。聖霊なる神が介入することができないくらい、その世界は罪で満ちています。そしてその世界は私たちの内側にあって破壊的な力を行使します。
まず舌は私たちのからだ全体を汚します。次に、私たちの人生の車輪を燃やして私たちの人生を台無しにします。さらに、舌によって私たちはゲヘナの火によって焼かれます。舌がもたらす被害は甚大であり深刻です。私たちのからだ、人生、存在そのものを破壊し、破滅に導くからです。
第三に、舌は休むことのない悪であり、死の毒で満ちています。一度動き始めたら最後、舌は休むことなく活動し、周囲に悪と死の毒をまき散らします。そうなると私たちはもはやそれを制御することはできません。そのような害毒が私たちの中にある、と聖書は私たちに教えるのです。私たちの舌は、何と恐ろしいものでしょうか。

【３】 賛美とのろいが同じ口から
そのような私たちの性質は具体的にはどのようなかたちで表されるのでしょうか。ヤコブは言います。「私たちは、舌で、主であり父である方をほめたたえ、同じ舌で、神の似姿に造られた人間を呪います（９）。」　主であり父である神を賛美するその同じ舌で、私たちは神がご自身の似姿に造られた人間を呪ってしまうのです。
私たちは何と矛盾に満ちた存在ではないでしょうか。大事なことは、その自覚を私たちが持っていることです。その自覚があれば私たちはイエス・キリストにすがることができます。イエス様の十字架を仰ぐことができます。
イエス・キリストはなぜ十字架にかかって死なれたのでしょうか。私たちの罪を赦し、私たちの汚れを清め、そして自分ではどうすることもできない私たちの罪の問題を解決するためです。もしこのイエス・キリストを信じるなら私たちは救われます。
しかし、もしこの自覚がなければ私たちには何の変化も起きません。舌を制御できないまま、不義の世界を自分の中に抱えた状態で、様々な害毒を周囲にまき散らしながら生きていかざるを得ないのです。

【４】 むすび
泉が、甘い水と苦い水を同じ穴から湧き出させることはありません。いちじくの木がオリーブの実をならせたり、ぶどうの木がいちじくの実をならせたりすることもありません（11～12）。同様に悪い人が良いことばを口にすることもなければ、良い人が悪いことばを口にすることもありません。その人の語ることばによって、その人自身の本質がわかる、ということです。
大事なことは私たち自身の本質が清められる、ということです。口を制御するという対処療法だけで満足しない、ということです。正しい治療のためには、正しい診断が必要です。間違った診断が、間違った治療につながり、悪い結果を引き起こすことがあります。私たちが正しく生きるためには、しっかりとした診断に基づく治療が必要なのです。
神のみことばは私たちの内側に何があるのかをしっかりと照らします。私たちの表面の裏側に、どんな深刻な病が隠されているのをしっかりと明らかにします。その上で神は私たちを、しっかりと治療してくださいます。イエス・キリストの十字架によって私たちの罪の汚れをぬぐい去り、私たちの内側を聖霊の宿る宮としてくださいます。何と幸いなことでしょうか。